「装盾亜目」の版間の差分
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2024年3月13日 (水) 11:17時点における版
装盾類 Thyreophora | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ガストニア・ブルゲイのマウント、ブリガム・ヤング大学古生物学博物館所蔵。
ステゴサウルス・ステノプスのマウント、ロンドン自然史博物館所蔵。
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地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
前期ジュラ紀 - 後期白亜紀 (ヘッタンギアン〜マーストリヒチアン)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Thyreophora Nopcsa, 1915[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
装盾類(そうじゅんるい)[3] 装盾亜目(そうじゅんあもく)[3] 担楯亜目(たんじゅんあもく)[4] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
下位分類群 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
装盾類(そうじゅんるい[3])あるいは装盾亜目(そうじゅんあもく[3])、担楯亜目(たんじゅんあもく[4]、学名: Thyreophora、「盾を持つ者」の意味)は、小型から超大型の装甲をまとい、前期ジュラ紀から恐竜時代の終わりまで全ての大陸で生息していた、鳥盤類ゲナサウルス類の一群である。レソトサウルス[8]、ラキンタサウラが含まれる可能性がある[7]。最も代表的なな属は、アンキロサウルスやステゴサウルスが挙げられるが、他にも沢山の属が含まれる[9]。
概要
装盾類はその名のとおり、全身を覆う鎧のような皮骨を持っていたことが特徴である[7]。基盤的な属は、単純で低く、キールのある鱗状の皮骨を持っていたが、より派生したものはサゴマイザーや防弾チョッキのような装甲など[10]、より精巧な構造を発達させた。全ての装盾類は草食性で[11]、体の大きさの割に脳は比較的小さかった。
thyreophoraの語源は、ギリシャ語の「θυρεός」と「φορά」から由来する。「θυρεός」は「盾」、「φορά」は「運ぶ」を意味し、合わせて「盾を持つ者」という意味になる[12]。
装盾類の下位分類
基盤的な装盾類
基盤的な(原始的な)装盾類は、曲竜類と剣竜類につながる分類を形成するか[10][13][14]、あるいは曲竜類との姉妹群関係にあり、剣竜類はそのどちらよりも基盤的かのどちらかである[15]。前期ジュラ紀に出現し[16][17][18]、後期ジュラ紀には見られなくなった[19]。
これらは小型から中型の恐竜で、小さな原始的なこぶのある皮骨でできた板を持っていた[20]。また、初期のうちは二足歩行をし[11]、後に四足歩行へと進化した。基盤的な鳥盤類と体つきは似ており、ほっそりしていた[7][19][21]。スケリドサウルス、スクテロサウルス、エマウサウルス、ユキシサウルスなど、これらの大部分は北半球の北アメリカ、ヨーロッパ、中国から知られている[16]。
曲竜類
曲竜類(鎧竜類)は、真曲竜類(アンキロサウルス科とノドサウルス科を含む)とパラアンキロサウルス類が主要なグループである[22]。
中期ジュラ紀に姿を現し、後期白亜紀に大繫栄し絶滅した[23][17]。一般的に皮骨の形態でグループの大別が出来る。皮骨の断面には、繊細で複雑に絡み合ったスポンジ状の構造だった。装甲を発達させるために、自らのカルシウムが使用されており、他の恐竜の様に成長ではなく、防御力を高めることが優先されていた[10]。
アンキロサウルス類
アンキロサウルス科は、真曲竜類の2つの科のうちの1科。中期ジュラ紀から後期白亜紀まで存続し[24]、アフリカ以外の世界中で栄えた[16][18]。この属は、膨張した椎骨が融合しひとつの塊[10]となった大きな尾部の棍棒が特徴的である[17]。その棍棒で捕食者を撃退したり、種内闘争に用いられた[20][23][25][26]。彼らは体格がよく、頭から尻尾まで骨の鎧で覆われ[24][8]、瞼のような小さな部分に至るまで重装甲であった。また、"頸部"はほとんど、あるいは全くなく、おおよそシャベル型をしており、頭部両側のほぼ耳と頬のあたりに2本の棘があるのが特徴。アンキロサウルス科は広くて平らな頭蓋骨を個体間の頭突きに利用していた可能性がある[25]。エウオプロケファルス・トゥトゥスは、おそらく最もよく知られたアンキロサウルス科である。
ノドサウルス類
ノドサウルス科は真曲竜類のうちのもう一方の科であり、実際にはアンキロサウルス科の祖先が含まれている可能性がある。中期ジュラ紀(約1億7000万年前)から後期白亜紀(約6600万年前)にかけて生息し、アンキロサウルス科と同じように装甲をまとっていたが、尾部にはスパイクがなかった。その代わりに、体の他の部分を覆っていた骨の瘤や棘が尾まで続き、肩甲骨あたりに鋭い棘をまとっていた[24][16][18]。ノドサウルス類の例はサウロペルタやエドモントニアで、後者は前方に突き出た肩の棘が特徴的[18][20]。
パラアンキロサウルス類
パラアンキロサウルス類は、2021年に別の分類群として認識された、曲竜類よりも基盤的なグループである。中期ジュラ紀に真曲竜類から分岐したと考えられている。真曲竜類とは異なり、ゴンドワナ大陸に分布し、南アメリカ南部、オーストラリア大陸、南極大陸から知られている。四肢が細長いなど、より基本的な特徴を残しているが、最も特徴的なのは尾の武器、マクアフティル(同名の武器にちなんで命名)で、尾の裏側に扇状の構造を形成する平らな骨皮の配列からなる。この構造は剣竜類のサゴマイザーや曲竜類のスパイクに似ているが、それとは異なった。マクアフティルはステゴウロスから完全に知られており、おそらくアンタークトペルタの断片的な化石からも知られている[22]。
剣竜類
剣竜類はステゴサウルス科とファヤンゴサウルス科からなる[10][8]。これらの恐竜は主に中期ジュラ紀から後期にかけて全ての大陸(主に北半球[10])で生息していたが[8][20]、一部の化石は前期白亜紀にも見つかり[27]、白亜紀の中頃には絶滅したとされるが[16]、インドの後期白亜紀の地層から剣竜類とされる化石が沢山発見されているが保存状態が非常に悪い為、その実態は定かではない[23]また、後期ジュラ紀に最も栄えた[17]。全ての属にプレートとスパイク(サゴマイザー)があった[20]。剣竜類は体に対し頭部が非常に小さく[27]、ステゴサウルス類は、シンプルで単純な歯を持ち非常に小さな頭を持っていた[23]。また、脳の大きさは恐竜の中で最小だった[20]。剣竜類は、胴椎に沿った板や棘の列と、長い脊椎を持っていた。剣竜類の剣板は体温調節の役割があり[7][17]、種を識別するためのディスプレイとして、また求愛行動といった[20]、誇示行動やライバルを威嚇するために使われたと考えられている[8][23]。剣竜類でよく知られているものとして、ステゴサウルスやケントロサウルス等が挙げられる。
分類
分類学
リンネ式階層分類体系の分類法は恐竜古生物学者の間では興味を示さなくなり[3]、ほとんど廃れてしまったが、21世紀の出版物の中にはランク分類を残しているものもいくつかある。ほとんどの場合、装盾類は一般的に、剣竜類と曲竜類を含むランク付けされていない分類群として分類されているが、装盾類は、剣竜類と曲竜類を下目として装盾類が亜目に分類されることもあり[4]、剣竜類と装盾類が亜目として分類されることがある。
系統発生学
装盾類は、1915年にフランツ・ノプシャによって最初に命名された[2]。装盾類は、1998年にポール・セレノによって「トリケラトプスよりもアンキロサウルスに近縁なすべてのゲナサウルス類」と定義された。装盾様類(そうじゅんようるい[3]、Thyreophoroidea)は、1928年にノプシャによって最初に命名され、1986年にセレノによって「スケリドサウルス、アンキロサウルス、それらに最も近縁な共通祖先とそのすべての子孫」として定義された[28]。寛脚類(かんきゃくるい[3])あるいはエウリポッド類(えうりぽっどるい[8]、Eurypoda)は1986年にセレノによって初めて命名され、1998年に彼によって「ステゴサウルス、アンキロサウルス、それらに最も近縁な共通祖先とすべての子孫」と定義された[29]。以下のクラドグラムは、古生物学者のRichard S. Thompson、Jolyon C. Parish、Susannah C. R. Maidment、Paul M. Barrett.による2011年の分析に基づいたものである[13]。
装盾類 |
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以下のクラドグラムはRiguettiら(2022)の系統解析であり、Soto-Acuñaら(2021)の曲竜類の分類を取り入れたものである[14][22]。
装盾類 |
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2020年、デビット・ノーマンはスケリドサウルスのモノグラフの一部として、初期の装盾類の関係を修正し、剣竜類が最も基盤的であり、スクテロサウルス、エマウサウルス、スケリドサウルスは剣竜類+曲竜類ではなく、曲竜類の進歩的なステムグループであることを発見した。クラドグラムを以下に示す[15]。
装盾類 |
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脚注
- ^ Gregory S. Paul: The Princeton Field Guide To Dinosaurs. Princeton University Press, Princeton NJ u. a. 2010, S. 215–239, ISBN 978-0-691-13720-9, Online.
- ^ a b Nopcsa, Ferenc (1915). “Die dinosaurier der Siebenbürgischen landesteile Ungarns”. Mitteilungen aus dem Jahrbuche der KGL 23: 1–24 .
- ^ a b c d e f g 冨田幸光・對比地孝亘・三枝春生・池上直樹・平山廉・仲谷英夫「恐竜類の分岐分類におけるクレード名の和訳について」『化石』第108巻、日本古生物学会、2020年、23 - 30頁、doi:10.14825/kaseki.108.0_23。
- ^ a b c 松井正文 編『バイオディバーシティ・シリーズ 7 脊椎動物の多様性と系統』岩槻邦男・馬渡峻輔監修、裳華房、2006年、343-345頁。ISBN 978-4-7853-5830-3。
- ^ Raven, T. J.; Barrett, P. M.; Joyce, C. B.; Maidment, S. C. R. (2023). “The phylogenetic relationships and evolutionary history of the armoured dinosaurs (Ornithischia: Thyreophora)”. Journal of Systematic Palaeontology 21 (1): 2205433. doi:10.1080/14772019.2023.2205433.
- ^ 橋本千絵 編『講談社の動く図鑑MOVE 恐竜2 最新研究 新訂版』小林快次 監修、講談社、2023年、5頁。ISBN 978-4-06-532918-4。
- ^ a b c d e 吉野敏弘 編『学研の図鑑LIVE 新版 恐竜』真鍋真 総監修、Gakken、2022年、136 - 155頁。ISBN 978-4-05-205184-5。
- ^ a b c d e f g グレゴリー・ポール 著、東洋一、今井拓哉、河部壮一郎、柴田正輝、関谷透、服部創紀 訳『グレゴリー・ポール恐竜事典 原著第2版』共立出版、2020年8月30日、256 - 259頁。ISBN 978-4-320-04738-9。
- ^ “Thyreophora” (ドイツ語). Dinodeta.de. 2024年3月5日閲覧。
- ^ a b c d e f 芳賀靖彦 編『学研の図鑑 [新版]恐竜の世界 DVD付 恐竜の進化と絶滅の謎をさぐる!』真鍋真 監修、Gakken、2018年、92 - 99頁。ISBN 978-4-05-406663-2。
- ^ a b 冨田幸光『小学館の図鑑NEO 恐竜 新版』冨田幸光 監修、小学館、2014年、116頁。ISBN 978-4-09-217311-8。
- ^ “Thyreophoraの覚え方 : 語源”. 天才英単語. 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b Richard S. Thompson, Jolyon C. Parish, Susannah C. R. Maidment and Paul M. Barrett (2011). “Phylogeny of the ankylosaurian dinosaurs (Ornithischia: Thyreophora)”. Journal of Systematic Palaeontology 10 (2): 301–312. doi:10.1080/14772019.2011.569091.
- ^ a b Riguetti, Facundo J.; Apesteguía, Sebastián; Pereda-Suberbiola, Xabier (2022-08-11). “A new Cretaceous thyreophoran from Patagonia supports a South American lineage of armoured dinosaurs” (英語). Scientific Reports 12 (1): 11621. doi:10.1038/s41598-022-15535-6. ISSN 2045-2322. PMC 9372066. PMID 35953515 .
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- ^ a b c d e 『講談社の動く図鑑MOVEmini 恐竜』小林快次 監修、講談社、2020年、22 - 33頁。ISBN 978-4-06-516327-6。
- ^ a b c d e 『小学館の図鑑NEOPOCKETネオポケットー4 恐竜』冨田幸光 監修・執筆、小学館、2010年、53 - 57、90 - 91、132 - 133頁。ISBN 978-4-09-217284-5。
- ^ a b c d 『講談社の動く図鑑 恐竜 新訂版』小林快次 監修、講談社、2016年、34 - 46頁。ISBN 978-4-06-220103-2。
- ^ a b 芳賀靖彦 編『学研の図鑑LIVE(ライブ)ポケット⑦ 恐竜』真鍋真 監修、Gakken、2017年、146頁。ISBN 978-4-05-204568-4。
- ^ a b c d e f g ジョン・ウッドワード 著、田中康平 監訳 喜多直子 訳『恐竜と古代の生き物図鑑』ダレン・ナイシュ 監修、創元社、?、74 - 81頁。ISBN 978-4-422-43029-4。
- ^ 土屋徹 編『学研の図鑑LIVE 恐竜』真鍋真 監修、Gakken、2014年、146 - 163頁。ISBN 978-4-05-203966-9。
- ^ a b c Soto-Acuña, Sergio; Vargas, Alexander O.; Kaluza, Jonatan; Leppe, Marcelo A.; Botelho, Joao F.; Palma-Liberona, José; Simon-Gutstein, Carolina; Fernández, Roy A. et al. (2021). “Bizarre tail weaponry in a transitional ankylosaur from subantarctic Chile”. Nature 600 (7888): 259–263. Bibcode: 2021Natur.600..259S. doi:10.1038/s41586-021-04147-1. PMID 34853468.
- ^ a b c d e G.Masukawa 著『恐竜好きのためのイラスト大百科 ディノぺディア Dinopedia』ツク之助 絵、誠文堂新光社、2023年、044頁。ISBN 978-4-416-62351-0。
- ^ a b c ダレン・ナイシュ、ポール・バレット 著、小林快次、久保田克博、千葉謙太郎、田中康平 監訳 吉田三知世 訳『恐竜の教科書 最新研究で読み解く進化の謎』創元社、2019年2月20日、075 - 076頁。ISBN 978-4-422-43028-7。
- ^ a b Coombs Jr., Walter P. (1995-07-01). “Ankylosaurian tail clubs of middle Campanian to early Maastrichtian age from western North America, with description of a tiny club from Alberta and discussion of tail orientation and tail club function”. Canadian Journal of Earth Sciences 32 (7): 902–912. Bibcode: 1995CaJES..32..902C. doi:10.1139/e95-075. ISSN 0008-4077.
- ^ Coombs, Jr, W.P. (1979). “Osteology and Myology of the Hindlimb in the Ankylosauria (Reptilia, Ornithischia)”. Journal of Paleontology 53 (3): 666–684. JSTOR 1304004.
- ^ a b 中村真哉 編『ニュートン科学の学校シリーズ 恐竜の学校』小林快次 監修、ニュートンプレス、2023年、20頁。ISBN 978-4-315-52725-4。
- ^ Sereno, Paul (1986). “Phylogeny of the bird-hipped dinosaurs (order Ornithischia)”. National Geographic Research 2 (2): 234–256.
- ^ Paul, Sereno (1998). “A rationale for phylogenetic definitions, with application to the higher-level taxonomy of Dinosauria”. Neues Jahrbuch für Geologie und Paläontologie, Abhandlungen 210 (1): 41–83. doi:10.1127/njgpa/210/1998/41.